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------ てか、気付けよな
何?
突然の事に飯塚を直視してしまう。
「良い男は、海斗だけじゃないって事」
「えっ?」
「何年一緒にいると思ってんだよ」
飯塚は呆れた様なため息をもらす。
飯塚とは小学生の頃から、学校もテニスクラブも一緒だった。
でも、それらしきそぶりが果たしてあっただろうか?
「不器用で寂しがりやのくせに、全く人を寄せつけ様としない。俺にさえ、何年たっても心を開かない。
でもそれってさ、
自分の弱さを知られたくなかったんだろ?」
飯塚が見透かした様にフッと笑みをこぼす。
心に何かの光が差し込む。
心臓がドキドキする。
何だろう? この感覚。
飯塚に感じた、初めての感覚。
不思議と心が軽くなる。
涙腺が緩む。
海斗の前でさえ、泣いた事なんてないのに。
「中学の卒業式の後、お前を探してた。
そしたらさ、
へったくそなピアノの音が聞こえてきてさ、たどり着いた音楽室で、
見つけた。
そして、そのまま引き返した。
それが間違いだったて、気付いた」
飯塚が真っすぐに私を見つめる。
「ずっと好きだった」
飯塚の瞳に私が映っている。
それが分かるくらい、飯塚との距離が近い。
「お前も俺を好きになれよ。
後悔なんて、絶対させないからさ」
飯塚が私の頬をつたう涙をそっと拭う。
頬に触れた飯塚の手に、自分の手を重ねてみる。
「あったかいね」
私の言葉に飯塚がニコリと微笑む。
私もはにかみながら微笑み返す。
ここから何かが、
始まるのかな?
【“好き”ってキモチ】 完
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