恋に恋して

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放課後の部活は、男女共ランニングから始まる。 校内を隅々まで2周。 それは約2km。 足に自信がある私には、 それほど苦にならない距離だ。 しかしさすがに男子の脚力には及ばず、 特に先頭を走る速瀬先輩とは、 いつも半周程の差が開く。 なかなか縮まらないその距離は、 今の私達そのものだと、つくづく思う。 後半周というところまで走り終えた時、 体育館裏に佇む人影が目に入った。 速瀬先輩!? もうとっくにゴールしているはずの速瀬先輩が視線の先にいた。 その目の前をまさに通り過ぎ様とした時、速瀬先輩が再び走り出した。 私に速度を合わせるかの様に。 「一緒に走ろ」 ただでさえ息が上がっているさなか、 更に呼吸が乱れ出す。 「足、速いんだね」 余裕の走りで語りかけてくる速瀬先輩。 しかし私は返事どころか、 無事ゴール出来るかさえ危くなった。 いつ心臓発作が起きてもおかしくない。 私の返事を待たずして、速瀬先輩は話しを続けた。 私のこの状況、絶対分かってないですよね? 「噂の事だけどさ、」 「えっ!?」 反射的に隣を走る速瀬先輩を直視。 自分で自分の反射速度に驚く。 が、もう遅い。 私の気持ち、バレバレだね。 「あの噂、」 心臓が止まる前に足を止める。 速瀬先輩を再び直視。 速瀬先輩もつられる様に足を止め、 私を見た。 「あの噂、間違って、」 「花乃ちゃーん!」 ん!? 涼だ! 涼のそれは、速瀬先輩のその先の言葉を遮った。 私達が足を止めたのは、不覚にも涼のいるサッカー部が活動するグランドの脇だった。 能天気なアイツが無邪気に両腕を振り上げ、大きくこちらに向かって両手を振っている。 「おいっ、何サボってんだ涼!!」 そしてサッカー部の先輩からげんこつを貰っている。 「面白そうな子だね。君のファン?」 「あっ、いや、」 後ろから次々と、ラストスパートをかけたテニス部集団が迫って来た。 「後もう少し。頑張ろっ」 速瀬先輩はそう言うと、自分のペースに速度を戻し、ゴールに向かって走り出した。 私はただその背中を追った。 ------ あの噂、間違って、 何だったのかな? その続き。 良いこと? 悪いこと? 期待したら、ダメかな? しない方が、いいのかな?
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