恋に恋して

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    部活終了後、忘れ物を取りに行った雅美を校門で待っていた。 「花乃ちゃーん!」 そしてそんな私の元に、満面の笑みを浮かべた涼が駆け寄って来た。 涼は私に対して本当に嬉しそうな表情を見せる。 そんな顔されたら、なつかれてる事もまんざらでは無くなる。 心地良ささえ感じてしまう。 「ねぇ、花乃のランニング中、手ェ振ったの分かった?」 「分かったよ。げんこつされてるのもね」 意地悪を加えてみたけど、涼は思った以上にポジティブだった。 「そんなに見ててくれたんだぁ」 返って喜ばせてしまう結果となった。 涼の笑顔につられて私まで笑顔になってしまう。 不思議な奴。 涼の前では無条件で笑っていられる。 そんな時、向かい合った涼の肩越しに 速瀬先輩が近づいて来るのが分かった。 目が合う。 私の笑顔が止まる。 緊張? 涼も私の表情の変化に気付き、 私の視線の先に振り向く。 速瀬先輩は私から目を逸らす事なく、 かといって歩調を緩める事なく、 すれ違いざまに 「さよなら」 と言って軽く微笑んだ。 「…さようなら」 急いで挨拶を返す私に再び微笑み、 通り過ぎて行く。 私は体をひねりその姿を追っていた。 さっきまであんなに心地良かった涼との時間が、私の中で嘘の様に崩れた。 涼が悪い訳じゃない。 でも、 見られたくなかった。 誤解……してないですよね?
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