14人が本棚に入れています
本棚に追加
部活終了後、忘れ物を取りに行った雅美を校門で待っていた。
「花乃ちゃーん!」
そしてそんな私の元に、満面の笑みを浮かべた涼が駆け寄って来た。
涼は私に対して本当に嬉しそうな表情を見せる。
そんな顔されたら、なつかれてる事もまんざらでは無くなる。
心地良ささえ感じてしまう。
「ねぇ、花乃のランニング中、手ェ振ったの分かった?」
「分かったよ。げんこつされてるのもね」
意地悪を加えてみたけど、涼は思った以上にポジティブだった。
「そんなに見ててくれたんだぁ」
返って喜ばせてしまう結果となった。
涼の笑顔につられて私まで笑顔になってしまう。
不思議な奴。
涼の前では無条件で笑っていられる。
そんな時、向かい合った涼の肩越しに
速瀬先輩が近づいて来るのが分かった。
目が合う。
私の笑顔が止まる。
緊張?
涼も私の表情の変化に気付き、
私の視線の先に振り向く。
速瀬先輩は私から目を逸らす事なく、
かといって歩調を緩める事なく、
すれ違いざまに
「さよなら」
と言って軽く微笑んだ。
「…さようなら」
急いで挨拶を返す私に再び微笑み、
通り過ぎて行く。
私は体をひねりその姿を追っていた。
さっきまであんなに心地良かった涼との時間が、私の中で嘘の様に崩れた。
涼が悪い訳じゃない。
でも、
見られたくなかった。
誤解……してないですよね?
最初のコメントを投稿しよう!