恋に恋して

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    一瞬、涼の表情が曇った気がした。 二人の間で淀みそうになった空気の流れを雅美が変えてくれた。 「ゴメーン、教室の鍵かかってて開けてもらってたら遅くなっちゃった」 「遅過ぎですよぉ」 すかさず言ったのは涼。 いつから一緒に待ってる事になっちゃってるの? 「そんな事言って、もう少し二人でいたかったんじゃない? もしかしてお邪魔だった?」 おいおい、雅美っ! 「そんな事ないですよ」 「じゃあ、花乃の事あきらめて 私と付き合う?」 雅美の悪ノリが炸裂。 でも涼はめげない。 「有り難いけど、俺は花乃一筋なんで」 顔がポッと紅くなる。 なに反応してんだ、私。 涼のこんな発言はすでに日常茶飯事だけど、やっぱりこうストレートだと照れてしまう。 まぁ何処まで本気かは分からないけど。 でも今更ながら、雅美には【敬語】って!! 「そうだ」 涼が思い出した様に叫ぶ。 「今度の土曜日、土佐中との練習試合があるから見に来てよ」 土佐中といえば市内では優勝の常連校だ。 だから、一年生で出れるの? って!! 「土曜日だったら顧問の竹田先生が出張で部活も無いし、いんじゃない?」 もォ、雅美ってば勝手な事を! 「ホント!? 俺頑張るよ」 涼もその気になってる。 だからぁ、 「涼は試合出れるの?」 失礼だけど聞いちゃった。 「だから出れる様に頑張るんだよ」 えっ! やっぱり出れる訳じゃないんだ。 「大丈夫、花乃のためなら絶対頑張れるから。だから絶対見に来て」 涼の目が力強く輝いている。 そんな瞳されたら断れないじゃない。 「絶対出るんでしょうねぇ?」 最終確認。 「約束する!」 何か、ホントに出れるんじゃないかっていう錯覚が起きる。 でも錯覚の奥には、期待があった。 「分かったよ」 その代わり絶対頑張るんだぞ!!
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