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------ 絶対頑張る。
------ 約束する。
涼はその言葉を現実にするかの如く、
次の日から練習に明け暮れた。
朝練を始めたという話しもある。
ランニング中の『花乃ちゃーん』も無くなった。
練習に集中しているのは見ていて分かる。
私自身、そんな涼を応援せずにはいられなくなっていた。
そして迎えた土曜日。
まさに試合日和の好天。
涼が試合に出れるか出れないかは分からないけど、私は迷う事なく試合会場である総合球技場に向かった。
雅美は美容室の予約を入れていたから、
終わり次第駆け付けると言っていた。
総合球技場は電車で二駅。
電車に乗るため、まずは駅に到着。
「名倉」
そこでまさかの速瀬先輩に出くわす。
「速瀬先輩!?」
「偶然だね」
「ですね」
私達の会話はいつもぎこちない。
しかも会話が続かない。
------ 背伸びしてるみたい。無理してない?
雅美のそんな言葉が頭をよぎる。
確かに涼といる時とは違う。
涼の前では自分でいられるけど、速瀬先輩の前では、どうしても構えてしまう。
『嫌われたくない』とか、
『子供に見られたくない』とか。
でも、そんなの本当の私じゃないのにね。
「乗るの?」
「あっ、はい。先輩もですか?」
「ああ」
私達は隣り合った自販機で切符を買った。
何処まで行くのかな?
速瀬先輩からも聞いて来ないから、私も聞かなかった。
しかし乗り場は一緒だったから、車内では四人掛けに向かい合って座った。
一駅目に到着。
速瀬先輩は何かを気にする様に窓の外に視線を投げていたが、降りる様子はなかった。
電車は間もなく発車。
ここまで私達の間に会話は無かった。
私は次で降りる。
このままなんて淋し過ぎるから、
「先輩は何処まで行くんですか?」
頑張って会話を探して見たけど、
こんなのしか思い浮かばなかった。
「もう過ぎた」
えっ!?
適当に聞いただけなのに、速瀬先輩の答えは適当に聞き流せなかった。
「過ぎたって?」
「さっきの駅で人と待ち合わせしてた。
でも、名倉ともう少し一緒にいたかった」
…それって…
思わず速瀬先輩を見つめてしまう。
「名倉は、長谷川の応援?」
一瞬返事に躊躇するが、速瀬先輩から目線を逸らしてコクリと頷く。
「行って欲しくない」
速瀬先輩!?
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