恋に恋して

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    私はただ呆然と速瀬先輩を見つめる。 「ごめん、ただのヤキモチ」 「えっ?」 ヤキモチって… 「名倉って、長谷川の前だと本当に楽しそうに笑うだろ? だからヤキモチ。 俺の前では見せない顔だから」 「それは、」 それは、 「長谷川は、名倉の事好きなんだろ?」 「面白がってるだけです」 「そうかな?」 「そうです」 「じゃあ、名倉は?」 「えっ?」 「名倉は、長谷川の事どうなの?」 「どうって……」 「好き?」 「私は、」 私は、ずっと、 今まで、ずっと、 速瀬先輩の事が…… そう、涼じゃない。 私は、 「速瀬先輩が好きです」 言っちゃった。 恥ずかしさで上げられない顔に、速瀬先輩の手が優しく触れた。 かと思ったら、そのままそっと速瀬先輩の唇が触れて来た。 キス……しちゃってる。 ほんの一瞬、時が止まった。 まるで私と速瀬先輩のためだけにプレゼントされた様な、一瞬の時。 「あの噂、間違ってないよ。 名倉の事、ずっと好きだった。 ごめんな、今まで言えなくて」 私に寄せた上半身を向かい側の座席に戻し速瀬先輩が言った。 「おいで」 速瀬先輩が、隣に私が座れるスペースを作った。 言われるがまま、私は速瀬先輩の隣に。 そして降りるはずの駅を乗り越していた。 幾つかの駅を過ぎた頃には、 速瀬先輩の肩に頭を寄せていた。 ピピピピピピ、 携帯の受信音に頭を上げる。 雅美からのメールだった。 [ 今どこ? 後半戦に涼でるよ]
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