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携帯の画面を見た途端、動きが止まる私。
------ 約束する。
涼の真剣な眼差しが私の脳裏をよぎる。
約束……守ってくれたんだね。
なのに……私は、
俯く私を速瀬先輩が気にかける。
「もしかして、望月から?」
状況を察する速瀬先輩。
私の瞳が涙で潤む。
「まだ間に合うかな?」
思い立った様に速瀬先輩が言った。
「えっ?」
「戻らなきゃ」
速瀬先輩は私の手首を掴み、扉に急いだ。
そして間もなく開いた扉を飛び出し、
反対側のホームにダッシュ。
電車に飛び乗り、来た道を引き返す。
電車の速度が変わる訳はなく、
気持ちだけを急がせた。
「フェアじゃなかった」
速瀬先輩の表情が後悔で歪む。
「俺も戻らなきゃ。はっきりさせて来る」
速瀬先輩は何かを決心した様に
私を見つめてそう言ったけど
意味は分からなかった。
今はただ、涼の元に急ぎたい気持ちだけだった。
駅に到着すると、私だけがホームに降りた。
速瀬先輩は最初に降りるはずだった次の駅まで行くのだろう。
速瀬先輩を乗せた電車の扉が閉じる瞬間、速瀬先輩が叫んだ。
「俺は本気だから!」
「私だって、」
私の言葉を掻き消す様に扉が閉まる。
ガラス越しに見つめ合い、
互いに精一杯微笑んだ。
その足で私はとにかく試合会場に走った。
「遅いじゃないっ!」
私に気付くなり雅美が怒鳴り声を上げる。
試合は後半の予定時間をすでに終え、
10分の延長戦に入っていた。
「涼凄いよ。前半についた4点差を、
後半で一点差まで追い上げたんだよ」
雅美は瞳を輝かせて興奮していた。
優勝チーム相手の猛反撃に
控え選手も観戦者も同じ様に興奮し、
盛り上がっていた。
そのさなか、涼がボールを持った。
時間の無さに、とことん守り抜こうとする土佐中は、五人で涼を取り囲む。
一人二人と交わし、三人目に足を引っ掛けられるが、体勢を持ち直し
残り二人の間からシュートを放ったところで終了を告げるホイッスルが鳴った。
力尽きてその場に倒れ込む涼。
結局負けはしたが、会場には両校の健闘を讃える拍手が沸き起こった。
「あっ!」
雅美は拍手をしている手を突然止めると
私に振り向き言った。
「ところで、何処行ってたの?」
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