繍眼鳥

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青年は続けた。 『母は死んだ子らを探しているのです。皆で取り押さえたのですが、農作業で鍛えられており、女ながら、並の力ではありません。近所の男らも吹き飛ばされてしまいました』 周瑜は青年の肩を起こした。 『それでは私にその母君を諌めにまいれ、ということか』 『はい、率直にいうとそうです…。このようなことを、私が申し上げるのはまことに恐れ多いことなのですが…。 母は昔から周瑜様を敬っておりました。 父は三年前に亡くなっておりますし、仕事仲間や友人はいても、いつも笑顔で振る舞い、本当の心を寄せることができる相手はいないようでした。 母は、日々の苦しみや疲れがたまると、一人この館の近くまでやってきては、聞こえてくる笛の音を聞いて過ごしていました』 その時、幼い娘がわっと泣き出した。 『わかった。今支度をしよう。まずは笛でも奏でれば、落ち着いてくれるであろうか。ただし母君のから見えぬ少し離れた場所から行おう。 今回はたまたま都合がついたが、他の民より特別扱いと思われるようなことはできないからだ。 それでも駄目ならば、また何か方法を考えよう。楊白、馬を引いてきておいてくれ』
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