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青年は頬に涙を一粒つたわせると、また平伏した。
楊白が周瑜の方へ身体を向ける。
『しかし周瑜様、これは本当のことかどうかわかりませんし、万が一、どこかの軍の策略なのかもしれません。危険です』
『いや、問題ないだろう。私にはこの者たちが危険な者だとは思えない』
小喬が、周瑜の腕をぎゅっと掴んだ。
『公瑾様、私もご一緒させてください』
小喬も、自分も何か手伝いたいと思ったのだった。
周瑜は首を横に振った。
『いや、小喬は家にいてくれ。だいぶ夜もふけっている。何があるかわからない。きみを危険にさらしたくはない』
小喬はうつむいた。
(公瑾様の負担になってはいけないわ…)
やむを得ず、うなずいた。
まもなく、周瑜は敷地の別館に駐在している衛兵数名を伴って、出かけていった。
それから、夜の闇が深くなっても周瑜は戻ってこなかった。
使用人たちはみな眠りにつき、館は静まり返っている。
小喬は、寝室に鳥籠を持ち込むと、窓辺に置いた。
周瑜の姿が見えないかと、窓の外をじっと見ていたが、月明かりが辺りをぼんやりと照らしているだけだった。
メジロは目を閉じて、静かに佇んでいる。
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