10人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
その時、メジロがぱたぱたと羽を鳴らした。
周瑜はふっとほほえむ。
『なんだ、まだ放していなかったのか』
『ごめんなさい。つい名残おしくて…。今日、放します』
『いや、飼おうか。小喬』
『えっ…』
『私も留守が多いから、きみもさみしい思いをしているだろう』
その時、メジロは飛び上がり、籠を突つきはじめた。
小喬は寝台から出ると、窓辺に向かった。
鳥かごを開いてやると、メジロがふわりと舞いあがる。そして、小喬の肩に止まった。
『公瑾様、私のさみしさに、メジロを付き合わせるわけにはいきません』
小喬ははっとして、口を手で押さえる。
周瑜が気にすることを、また呟いてしまった。
周瑜は立ち上がると小喬の正面に立った。
メジロは周瑜を見つめてまた羽を鳴らす。
周瑜が人差し指を差し出すと、メジロは飛び移った。
小喬が見上げると、やわらかな朝日が周瑜の顔を照らしていた。
おだやかな笑顔で指先のメジロを見つめている。
『公瑾様、メジロを手放す代わりに、一度だけ素直な気持ちを伝えさせてください』
小喬はつぶやいていた。
周瑜は、はっと小喬の瞳を見つめる。
『私は、心より公瑾様をお慕いしております。私を見初めてくださったのが、あなたでよかったと本当に思います』
最初のコメントを投稿しよう!