繍眼鳥

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落ちていた時の雛は、まだ羽が生えそろっておらず、頭皮が見えるほどだったが、今はつやつやと被毛に覆われている。 (あんなに小さくかった、この子が…) 小喬の表情に笑みがこぼれる。 夫妻に子供はまだいなかったが、小喬の心の中には『母性』が顔を出していた。 周瑜がひょいと小喬の手元をのぞきこんだ。 『そろそろ放すかな』 小喬ははっとする。 『放してしまうのですか?』 周瑜はきょとんとしている。 『いつまでも、籠の中では可哀想だろう?』 小喬はうつむいてしまう。 (そうか、そうよね…。大きな空の下で暮らす方が、しあわせよね) 周瑜はそんな小喬を見て、バツの悪そうな表情を浮かべた。 そして、ふいと天井を見上げる。 『まあ…。私が言えた義理ではないか。 君のいた皖城を制圧したのをいいことに、君を自分の妻に据え、建?に連れてきてしまったのだから…。 おまけに、忙しさにかまかけて、どこへも連れて行ってやしない』 周瑜は小さく息を吐いた。 小喬は慌てて、周瑜の袍の袖を引く。 時は乱世と呼ばれ、大陸上では途切れることなく領地の奪い合いが起きていた。
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