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敗者が差し出すものは、領地のみならず、人もその対象であり、女も例外ではなかった。
女を大量に囲っている権力者もいるらしい。
ただ、運がよければ、諸将の妾の一人にでも成りあがれる。
小喬はあまり詳しいことはわからなかったが、時々思っていた。
嫌いな男に娶られたら、どうなるのかしら…、と。
心に決めた相手がいるにもかかわらず、そこから引き離された女。
戦で精神が荒立った男に身体を粗末に扱われる女。
不遇な者もいるのではないか、などと、想像すると胸が痛くなる。
小喬は、この『周瑜』という男に見初められ、娶られた。
揚州一帯を支配する孫権軍の重臣である。
顔立ちは女性的で美しく、すらりとした長身で、細身ながらも豹のようなしなやかな肉体をしていた。
周瑜が夜の長江のほとりで月を見上げる様は一枚の絵のようで、小喬は何度も見とれた。
皖城で、小喬と姉の大喬は美しい姉妹で有名であった。
人々のあいだでは『その美しさには、月も光を消してしまい、花も恥らってしまう』などと噂されていた。
しかし、小喬からすると、周瑜を前にすれば、恥らう月や花は自分たちのほうだと感じる。
周瑜は育ちもよく、小喬をいつも丁重に扱い、穏やかに接していた。
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