恋心

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「行くぞ。」 「待って、乗る!」 自転車の後ろは指定席。 今はまだ“私”だけの。 お願いだから、他の人なんて乗せないで。 そう思う私は、可愛くないね。 二人を乗せた自転車は、少しよろけながら、何とか漕ぎ出す。 「重い」と言うつぶやきは聞こえなかったことにしよう。 後ろ向きで乗れば、遠ざかっていく景色。 大きくなる入道雲。 青い青い広がる空。 夏のにおいをはらんだ風。 いつの間にこんなに広い背中になったんだっけ。 触れ合った背中が熱くて。 本当に熱くて。 少し早い呼吸と鼓動が伝わってくる。 意識しちゃいけないって分かってるのに。 何年幼馴染やってるんだか。 何年片思いしてるんだか。 いい加減、この関係をどうにかしたいのに、臆病な私は何も言えなくて。
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