6人が本棚に入れています
本棚に追加
「行くぞ。」
「待って、乗る!」
自転車の後ろは指定席。
今はまだ“私”だけの。
お願いだから、他の人なんて乗せないで。
そう思う私は、可愛くないね。
二人を乗せた自転車は、少しよろけながら、何とか漕ぎ出す。
「重い」と言うつぶやきは聞こえなかったことにしよう。
後ろ向きで乗れば、遠ざかっていく景色。
大きくなる入道雲。
青い青い広がる空。
夏のにおいをはらんだ風。
いつの間にこんなに広い背中になったんだっけ。
触れ合った背中が熱くて。
本当に熱くて。
少し早い呼吸と鼓動が伝わってくる。
意識しちゃいけないって分かってるのに。
何年幼馴染やってるんだか。
何年片思いしてるんだか。
いい加減、この関係をどうにかしたいのに、臆病な私は何も言えなくて。
最初のコメントを投稿しよう!