日本経済は復活しました

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 これはパチンコ業界がしかけた生き残り策だった。パチンコ店では出玉を直接現金と交換する事は、賭博行為になるとして法律で禁止されていて、昔からライターの石とか「特殊景品」と呼ばれる品物を客に渡し、客はパチンコ店の外にある表向き無関係な「買い取りショップ」へそれを持って行って現金と交換するというシステムが定着していた。  ならばそれと似たような事を直接小売店でやればどうか、という発想だった。もちろん最初から成功したわけではない。そもそも一般庶民が持ち込める品物の種類は限られていたし、店によって交換レートがバラバラで利用しにくかった。  しかしここで電力不足という日本が抱える問題が有利に作用した。原発がなかなか再稼働できず、メガソーラーも軌道に乗れない状況が長く続いていたが、新興携帯電話からエネルギービジネスに転じた得正義という日本有数の富豪が自社で発電した電気を超小型の蓄電池に小分けして貯蔵する新技術を開発。  タバコの箱ぐらいの大きさの蓄電池が一万円札、ライターほどの大きさの物が五千円札、ボタン型の電池がサイズに合わせて千円札、五百円玉、百円玉、という感じで0円ショップで取り引きできるようになり、これが事実上の買い物用のお金として流通し始めた。
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