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そんな頃、東京都内のとあるスーパーで定員が立派な仕立てのスーツを着た中年のエリート然とした男の客に、信じられないという表情で聞き返していた。
「あの、本当に現金でお支払いになるんですか?」
その客は苛立たしそうに語気を強めて店員に言う。
「買い物は金で払うのが普通だろう?どこに問題がある?」
「いえ、それはお客様のご自由です。ではお買い上げ千円、消費税5千円、合計6千円になります」
その中年の男は食料品が入った袋を下げて自宅に帰りつき、ダイニングに入った。ちょうど夕食時で妻と高校生に娘がテーブルについていた。男はスーパーから持ってきた袋からパンなどの食品を取り出し、せっかく作ってあった妻の料理には目もくれずに頬張り始めた。娘があきれ果てたという口調で言う。
「お父さん、いいかげん意地張るのやめなよ。わざわざ消費財払って買うことないじゃない」
男はむすっとした表情のまま言い返した。
「おまえとお母さんはそれでいい。だが私はこんな変則経済で手に入れた物を食べるわけにはいかない。日本銀行券を発行している組織から給料をもらっている以上、正規の通貨で買った物以外は一切口にせん!」
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