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「あんたさ…」
ふいに後ろから声を掛けられた。赤色の長い髪を動きやすいよう一つに結びながら歩いてくる。幼なじみであり同じギルドに所属、実力者であるミミ・アトラスだ。彼女の笑顔を見た者たちは皆彼女の虜になると言われている彼女だが、今そこに笑顔は無く、その美貌は呆れた表情一色で私に向けられている。
「ミミじゃない、依頼終わったの?」
「本当疲れたわ、一人でする依頼じゃないわよ。って、私の話はいいの!アキ…またやったの?」
「ああ、これのこと?」
私は周りを見渡す、ただの訓練室。ちょっと違うのは様々な所に切り傷や抉られた壁、黒く変色している場所もある。また部屋の中央からやや右側に兵士、鎧を纏い傍らに剣が床に突き刺さっている、その装備には至るところに装飾が施されており、彼の地位を象徴している。だが、その装備も今は輝きを失い所々欠けいる。その主は先程からピクリとも動かず、口の近くにある髪が僅かに揺れていることが、彼の生死を教えてくれていた。
「いつも通りよ」
「あんたね、この人誰だか知ってるの?」
「勿論よ、王室直属の第一師団長でしょ?」
「正解、知っててボロボロにするって…」
「ミミ?これは同意のもとよ?この人はギルドに行きなり乗り込んできて、俺と結婚してくれ!って叫ぶから、私に勝ったら良いわよ?って言った結果だもん」
「この人のどこが悪いのかしら、人望あって貴族でイケメン。これほど良い条件は無いわよ?」
「私は自分より強い人としか結婚しないの」
「一生無理ね」
「何でよ!」
「…もう知らない」
ミミは最後にそう言い残して部屋を去った
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