8人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は幽霊を信じている。
科学者を目指してるやつが何を非科学的な事言ってるんだと思う気持ちはよく解る。だが、俺が人工知能プログラムの開発に力を入れているのも、――妹が大好きなのも、全てその幽霊が原因なんだ。
子供の頃、周りよりかなりやんちゃだった俺は、少しやんちゃ過ぎて友達を失った。
仕方なく部屋で独り、何かの落書きをノートに書いて暇を潰していた。
ソレは、その時に現れた。
眩い夕景を背に、 ソレは真っ直ぐこっちを見ていた。
君は誰? と訪ねても、ソレは何も答えず震えていた。
体調が悪いの? と聞いたら、ソレは静かに頷いて、そしてそのまま俯いた。
――頼みがあるんだ。
いくらかの沈黙の後、ソレは言った。
なに? と聞いたらまた沈黙の時間が訪れて、どうしたのかな、と首を傾げる。そして、止まっていた時間が動き出す。
――妹を、大事にするんだぞ。
時間の変わりに俺の思考回路が止まった。
いやな、だって意味がわからなかったしさ、とりあえず「解った!」と潔く返事をしたはいいが、その時俺がどう思って たのかも覚えていない。ただ、大人になった今では、なかなかシュールな話だと思う。
だから、俺がはっきり言える事はただひとつ。
俺は今でも妹が大好きだ。もはや愛してる。
そして妹を愛してるが故に、人工感情開発に人生を費やしている。
最初のコメントを投稿しよう!