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「そりゃあお前、やっぱりいつ聞いても病気だとしか言いようが無いぜ」
さっきの話を聞いた科学サークルの一員、塩崎千博(しおざきちひろ)が溜め息混じりにそう言った。
千博のほうがいきなり、幽霊は信じるか、と聞いてきたから答えたというのに、少し話が脱線しただけで俺を病人扱いだ。
因にここは科学サークルの部屋で、俺達はラボと呼んでいる。サークル1のヲタクである千博が命名したのたが、元ネタはどこから引っ張り出してきたのか。俺には解らん。
どうでもいいが千博は、このサークルの名前も『未来ガジェット研究所』にしたいとも言っていた。二次元はエロゲくらいしかやってないから、二次元全般がストライクの千博の話題には着いていけない時がある。
「しかしなチヒロ。前回病院に行った時は特効薬はありませんと言われたぞ? 今のご時世特効薬も無い精神性疾患なぞ、そうは無いだろう」
悔しいからたまには千博を話題の置き去りにしようと、ありもしないジョークを飛ばす。
しかし、
「そうかぁ……。だが大丈夫だ問題無い。お前の病気は必ず、俺が治してやる」
ジョークとして扱われなかった。これは結構キツイかもしれない。
空気も良い感じに死んだところで、俺と千博は揃ってラボの隅を見た。そこにはこの世のものとは思えない程の美少女が居るのだが――いや、違うな。事実、この世のものではない美少女が在る、だ。
黒く艶やかな髪をツインテールにして、淡い色の瞳は間違えて宝石を入れてしまったんじゃないかと思ってしまうほど輝いていた。
肌は不健康な程に白く、身体は虚弱なまでに細いそれは、――頭部から白い煙を挙げていた。
「さて、コレ、どうすんだよ啓吾(けいご)」
千博に問われ、項垂れる。どうするかなど俺だって聞きたい。
「とりあえず冷却だな。その後に、さっき変えた所を元に戻そう」
仕方ないから深追いはせず、一旦引き下がる事にした。
人工知能プログラム及び人工感情。
昔は虹みたいに遠い夢物語だと思っていた幻想の破片が、今確かに、俺達の眼前にあった。
しかし結果はご覧のとおり、破片は破片のまま形を成さす、俺達の期待と努力をオーバーヒートの煙に変えた。
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