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「そんなに慌てなくても…置いて行かないのに」 そんな彼の声に顔を上げると、やっぱり優しい微笑みで私を見ていて。 「…鼻赤いよ。痛くない?」 …なんて心配そうに聞いてくれるから。 ドクン、と心臓が大きく鼓動を打った気がした。 「あ、大丈夫です。ごめんなさい。 あの、あなたこそ痛くなかったですか?」 「大丈夫。痛くないよ」 そう言う彼に頭をぽんぽんされて始めて、物凄く距離が近い事に気づく。 多目的室にいた時よりも。 寧ろこれは近いとかより、ほぼ密着。 それを意識し始めたら急に恥ずかしくなって、思わず彼から離れる。 「その、行かないと、じ、時間が……」 彼には私の気持ちが分かってしまったのだろうか。 至極楽しそうに「そうだね」なんて言って、再び歩き出す。 ……彼は一体どんな人なのか。 そんな事を思いながら、今度はぶつからない様に彼に着いて行った。
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