その瞳に、ご用心。

１

「あー…もうどうしよう」

転校初日だからって、お母さんの言う事聞いて早く来るんじゃなかった。
始業式の日に、こんな時間に来る人なんてそんなにいないよね。

携帯が表示する時間は6時50分。
……多分あと30分はこんな感じかな。

特別広い学校って訳じゃないし、構造が変わってる訳でもないと思う。
でも私は、天から“方向音痴”という素敵な才能を授かったから。
……まずこうやって学校まで辿り着けた事が奇跡で。

「こんな才能要らなかったよー…」

正直、"方向音痴”は才能ではないと思う。けどそんな事、今の私にはどうでも良くて。
教室にも辿り着けなければ、職員室にさえ辿り着けない。
この状況を何とかしなければ。

……ってあれ？ここ何回目だっけ？