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まさが『怪我はない?!』 と焦った様子で私に問う。 「あはは、大丈夫ですよ。」 自分でも分かるほど、渇いた笑い声。 「まさ焦りすぎですよ!すみませんね、かなちゃんもまゆみちゃんも。びっくりさせちゃいましたね。俺片付けますね。」 そう言って急いでほうきとちりとりを取りに行く。 「はぁ‥」 つい、口から溜め息が出る。 何やってんだか、本当に。 まさに好きな人がいるくらいでこんなに動揺して。 皆の元へ戻ると何故か静かで張り詰めた空気。 私はあまりこの空気が好きじゃない。 「何ですかね。最近ボーッとすること多くて。はははっ。何か‥よく分からないんですけどね。」 ささっと片付けながら話してみたけど、皆ずっと黙っている。 こんなことなら音楽かけとけば良かった。 音楽ーあ、ピアノ弾く約束してたんだっけ? ピアノ‥弾こうかな。 ゴミ箱にガラスの破片を慎重に捨てて手を石鹸で綺麗に洗い、ピアノの方へ向かった。 「まゆみちゃん。新曲弾くよ。」 「は、はい!ここで聴いてますね!」 ピアノから一番近い席に座って彼女は笑顔でピシッと背を伸ばして応えた。 この曲はまさに向けて作った歌だ。 「ふぅ‥」 本人の前だと少し緊張するな。 なんて思いながらピアノで前奏を弾き始めた。 ♪いつからだろう  君の事を  気が付いたら  追い掛けていた  辛い時君が近くで  ふんわりと  笑いかけてくれた  雲の奥には太陽がいて  光を届けることは  出来ないのに  光を与え続けてくれる  そんな君が好き  だけど、届かない  光は決して届かないんだ  分かっているけれど  解ってくれないよ  君を想うことが  苦し過ぎると思ってしまう  でも、君を想うことが  私を幸せにしてくれる  
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