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弾き終わった。 パチパチパチパチ と小さな拍手が起こる。 「本当に凄い、ですね。なんか新野さんが泣いてるのを見てたら私も感動して泣いちゃいました。えへへ」 照れたような笑顔で涙を流しながら話す彼女。 "新野さんが泣いてるのを見て" その言葉に引っかかる。 私が泣いてる? 嘘だ。 そう思いながらも頬に触れてみると、涙で濡れていた。 歌いながら泣いてたんだ。 そう自覚すると、瞳から一粒また一粒と涙が溢れ出す。 「はは‥っ。本当にどうしたんだよ、俺は。」 焦っているのか、自然と自分のことを"俺"と言っていた。 今日は調子が狂うな。 いつもはあまりないのに、俺目当ての客が来たり、皿を割ったり、泣いてみたり。 「ごめん、まさ。ちょっと俺抜けるわ。お客さんお願い。」  
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