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ーガチャ 扉を開けると小さい背中を丸めて声を押し殺して泣くかずが居た。 その背中がとても悲しそうで、心細いと言っているようだった。 つい、抱き締めたい衝動に駆られる。 そして俺は気が付いたらかずの背中を抱き締めていた。 「かず‥」 俺が耳元で名前を呼ぶと、ビクッと肩を揺らす。 「大丈夫?」 そう言って優しく抱き締める力をほんの少し強くする。 かずのこの甘い香りが、優しい歌声が、寂しそうな背中が、癖になっている敬語が、俺に向かっていつも笑いかけてくれる笑顔が・・・愛しくて愛しくてたまらない。 全部俺のものにしたくなる。 「かず?どうした?」 出来るだけ優しい声で問い掛ける。 「おれ、鳥川さっ‥のこと、が、すきっ」 泣きながら俺の腕の中で、愛しい彼が発した言葉は唐突だったけれど俺が今一番欲しかった言葉だった。  
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