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『さて、これより模擬テストの内容を各試験官に説明してもらう』
マイクが壇上のマイク立てに戻されると、副校長は壇上を降りて他の教員と交代した。
そんな一連の流れを傍観者であるかのように見つめる女子生徒がいた。
その横にはニヤニヤと笑う男子生徒数人が座り、ヒソヒソとやり取りを交わしている。
「おまえ、声かけろよ」「お前がかけろって」
男子生徒の視線に気がついているだろうが、女子生徒は無反応で壇上で説明をする試験官を見つめている。
「ねぇ、君。名前は?どこの戦場出身?」
女子生徒の横に座り、まくし立てる様に質問をぶつけた男子生徒は、冷やかすほかの生徒に目配せをして、さらに湧かせる。
「私の名前はオルレア、出身は南西部パスルート戦線」
瞬間。さきほどまでニヤニヤが止まらなかった男子生徒の表情が曇る。
「え、オルレア?しかも、南西部で一番過酷な戦場だったパスルート出身って……」
女子生徒から少し離れた位置に座っていた生徒は、オルレアの隣に座って話しかけていた男子生徒の表情の変化に気づかず、さらにはやしたてた。
「そうなの?あそこから出たことなかったから、どれくらいひどい場所なのか、わからなくて」
オルレアは壇上の試験官から目を逸らさずに、ボソボソと返事を返した。
「あ、ああ。そっか、知らないならしょうがないよな」
引きつった表情を無理やり笑わせて男子生徒は言うと、狭いイスのギリギリまで後退した。
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