偏見

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 面接時間はそれほど長くはなかったが、私にとってかなり長く感じた。すべてが終わり、会社を出たとき大きなため息が出た。携帯電話を見る。そこには佳代からの電話が入っていた。若干嫌な気がした。おそるおそる電話をする。 「もしもし、佳代?」電話口からはすすり泣く声がした。 「佳代、どうしたの?」心配になり、声が大きくなる。佳代は小さな声でこう言った。 「今までありがとう」嫌な予感がする。 「今、どこにいるの?答えて!」 「マンション」声に元気がない。自殺をするつもりなのだろうか...。 「今から助けに行くから、待ってて」私は電話を繋げたまま佳代の家まで走っていった。 電話口からは泣き声と共にごめんという言葉。 「大丈夫、今すぐ行くから」私はずっとこういっていたと思う。あまりに必死で何を話していたのか覚えていない。
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