私の恋人が貴方でよかった

偏見

　佳代は下を向いて、いきなり泣き出してしまった。しゃっくりをあげながらも必死に涙を抑えようとしていた。
「い、いきなりどうかしたの？」すると意外な言葉を佳代は口にした。
「凛がうらやましい」
「ええ？」飲んでいた紅茶を戻してしまいそうな勢いで私はそう言ってしまった。

「私のどんなところが？彼氏とは最近別れたし、いいところなんてないって」
「みんなと仲がいいし、優しいし。悩みなんてないんでしょ？」痛いところをつかれて、胸がぎゅっとした。
「そんなことないって。悩みは確かにないけれど」佳代は冷たい目で私を見る。
「私の気持ち、分かるわけがない。凛に負けないから」そう言って立ち去っていった。てか、いきなりどうした？

店員さんも驚いて呆然と立っていた。私は会計を済ませ、一応メールを送った。なんだか怪しい雰囲気。私は帰り道、夜空を眺めながら歩いていた。綺麗な星だ。冬の空って澄んでいて、吸い込まれそうな感じがする。そしてなんともいえない感じがある。自分の心も澄んでいくような。
「凛がうらやましい」先ほどの佳代の言葉が心に残っていた。なにがいいの？私の。何も知らないから言える事で...。景色がかすんでいく。