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次に目に入ったのは、
「国家ライセンス……?」
ミライたちはどちらとともなく声を漏らした。おそらく同い年であろう女がこちらに向かって歩いてきているが、その胸にはこの国のどんな場所においても魔法を使用することを許可する証、国家ライセンスの金バッチが輝いていた。
「はじめまして、になるかな? 明日野君に杉田君」
「――!?」
本当に初対面であろう少女が口にしたのは紛れもない己が名。警戒せずにはいられなかった。
「そう警戒されるといい気持ちではないぞ? 同級生同士、積もるも話があるとは思うが今は時間がない。これに乗るがいい、あと数分でつくだろう」
別に急いでもないミライにとって車での登校はなまじ幸運とも言いがたい。が、彼の同行人にとってはまさに砂漠のオアシスというか、カコの顔は水を得た魚のように輝きを灯した。
「いっやー、いいのー?」
「バカかお前は。もともと遅刻する気満々だったんだ。今さら遅れようが、こんな素性のわからないやつの車に乗るよりはいいだろうが」
「明日野君」
「なんだよ、気安く呼ぶな」
一定の距離を保つ二人。謎の少女に敵意はないが、なんせ纏う雰囲気が怪しげだ。同級生だからといって気を抜けば食われてしまう。
「先にいけばいい。カコは持っててもいいけどな」
「えぇ!?」
「別に敵ではないだろうしな、ただ胡散臭いだけで。仲良くないたいとは思わねぇ」
「君は友達が少ないだろう?」
「…………ップ」
「いらねぇだろ? 後で見てろよカコ」
問題の少女は悪びれもしないで続ける。
「ならば、私が君の高校初の友人になろうではないか、と思ってな。私の名前は“通城宰 聖(ツウジョウサイ セイ)”。通城宰財閥の一人娘にして国家魔術Aランクの魔術師だ。何卒よろしく頼む」
「あっそ」
歩き出すミライ。仕方ないと言ったように後を追うカコ。
「……つれないな」
セイはため息1つつくと、目を閉じ集中モードに入った。
「No.5 テレキネシス」
迸るエネルギー。紛れもない魔力の塊が二人目掛け放たれた。
「うおっ」
「わわっ」
自身の意思とは無関係に身体が宙を舞う。彼らに反抗の余地はない。
「フフッ。国家魔術師をなめてもらっては困るぞ?」
連行された。
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