プロローグ 日常に、幕を閉じる

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関東に位置するこの私立柳学園は兎に角不思議な学校だった。 市街地から電車で10分程離れた柳町。寂れた駅のフォームには緑色のブレザーを着た学生の姿がちらほら見える。 柳駅から出てそのまま突き当たりまでひたすら真っ直ぐ突き進むと左右に別れたT地路を右に曲がる。 更に開けたその道は、トラックが良いスピードて走り抜けていく。そんなトラックを横目に一人の少女は、ため息を付きながら歩いていた。 天摩 蒼。今年の4月に私立柳学園に入学したばかりの新入生である。 何時も寝坊ばかりの蒼だったがこの日はなんだか朝から変な夢を見て目が冴えてしまった。何時もなら大好きな二度寝も今日は気が進まず、そのままやることもなく家を出た。 ほどなく歩いていくと左手に【柳町眼科】が見えてきて、その眼科の小道に入る。ここまで来ると民家が建ち並びほとんどの車が入ってこないので、学生たちは道に広がりながらポツポツと歩いていく。 この早朝にここにいるのは朝練があるごく僅かな生徒だけだ。 暫く平坦な道を歩いていくが、一度家と家の間を曲がると視界は一気に開けてひときは細い道になり急激な下り道となっている。この急斜面を降りていくと小川が流れていてその上を通るための橋がか掛けられている。辺り一面は住宅街から一気に田んぼ道へと風景は一変した。 田んぼ道を一直線に進めばそのまま私立柳学園の校門を潜り抜ける。 この道を使うのは近所の住民か、この学園の関係者ぐらいだ。 蒼は校門まで来て再びため息をついた。民家を抜けた田んぼの中に聳え立つ私立柳学園はセレブ高でも何でもないのに東京ドーム2個分の敷地面積を持つ。偏差値38の県内1のレベルの低い高校だ。そのため滑り止めとして受ける生徒たちが多く、ある意味では人気の学園でもある。 蒼は滑り止めでも何でもなくこの学園に入学した。と、言うのも私立にしてはどういう制度で成り立っているのかさっぱり不明だが、赤点さえ取らなければ公立高校とほぼ変わらない学費で通うことが出来るため、蒼の中学の担任大山が蒼にこの学園を推し進めた。 「………大山先生……」
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