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息が苦しくなるくらい、長いキスが終わって、再び貴士くんの胸に顔を埋める。
ぎゅう、とまた抱き締められ、隙間なく抱き合っているうちに、頭が沸々と冷えていく。
これで、本当に終わったんだ。
腕を緩めて、身体を離すと、今度は難なく放された。
一瞬、ズキンと胸が痛んだが、見ないふりをして無視した。
「……ありがと。…と、ごめんね?」
「……ううん、こっちこそ」
一歩後ろに下がって、距離を空ける。
拡がった視界一杯に貴士くんを映して見て、やっぱりかっこいいなぁと改めて思う。
顔も、体格も、纏う雰囲気も、低くて線の細い声も、ゆっくり喋る話し方も、マイペースなとこも、意外と真面目で、気遣い屋さんなとこも、全部好き。
そんな風に思える人に、また私は出会うことができるのかな。
「…バイバイ」
決心が鈍らないように、自分から動いた。
姿を見ているのが辛いから、後ろを向いて、歩き出す。
「…バイバイ」
少し歩いてから、背中にかかった声に振り向くことも出来ず、後ろ手に手を振る。
泣いてしまいそうだった。
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