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朝焼けが、視界の端に映る。
ぽつり、ぽつりと紡がれる言葉を、私は複雑な気持ちで聞いていた。
「ずっと、ほんと最初の頃から、りおちゃんは、俺の中で特別な存在だったんだ」
そんなこと、ちっとも気付かなかった。
優しいのも、気遣ってくれるのも、客商売だからとばかり思ってた。
…思うようにしてた。
「お店に来るたび、ちょっとテンションが上がって、こんなこと、お客さんに思うの良くないんだろうけど、実は…かなり…ドストライクで、いいなって、思ってて」
照れくさそうに話す姿につられて、言われたこっちの方が恥ずかしくなる。
でも、たぶん素面じゃきっと聞けない話だろうから、取りこぼしなく全部聞いておこうと思った。
「りおちゃんから、男の人の話が出ると、…勝手だけど、ヤキモチ、ってゆうか…。ホント、勝手なんだけど…」
正直、少しは気にしてくれるかなぁと思って話してた部分はあった。
けど、本当に気にしてくれていたなんて、思わなかった。
何話したって、いつも穏やかに笑って受け流してて、適当にあしらわれてるとばっかり思ってた。
「…知らなかった。そんな、思ってくれてたなんて」
「うん。俺、顔に出ないから」
そう言って、少し自嘲気味に貴士くんが笑う。
私は泣きそうになって、グッと奥歯を噛んで、堪えた。
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