『ごめんなさい』

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「…なんか、ごめんね? 困らせたよね」 「いや、そんな…」  しんみりしたくなくて、軽い感じで言ってみる。  並んで歩きながら隣を見ると、貴士くんは少し俯いて、足元を見ながら歩いている。 「…時間かけて、最後にこんな話で、ほんと、ごめん」  申し訳なさそうに謝られて、つい笑ってしまう。 「いいよー、だってそんだけずっと考えてくれたってことじゃん。めっちゃ悩んでんの、すごい分かったし」  笑いながら、その顔を覗き込んで、斜め下から見上げて返す。  目が合って、貴士くんも力なく笑った。 「…でも、ほんとに……特別だったんだ」 「……うん」 「もし…、もっと、早かったら……、また、違う形で、出会っていたら……」 「……付き合えたかも、しれない?」 「………か、な」 「……じゃあ…、惜しかったなぁ……」  今度は、あまり上手く笑えなかった。  鼻の奥がつんとなり、危ない予感がして、鼻から息をゆっくりと吸って、誤魔化す。  …今、この人は何を考えてるんだろう。  私と同じで、色んな思いを巡らせているのかな。  IFは語るもんじゃないよ、と誰かに言われたことがある。  過去には戻れないし、今後に活かせないような無意味な話なら、ただ悔やむだけで悲しくなるだけだ。  それを、今ほど痛感したことはない。
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