「なんとも可哀想な上履きの話しさ」

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湿気が良いか熱派が良いか。いや、違うな。湿気がマシか熱派がマシか。 そう問われたとき、ぼくはなんと答えるだろうか。ほんの15分前なら湿気と答えたであろうが、今現在、熱派のほうが何万倍もマシと思えてくる。 7月も後半。容赦なく日差しが照りつける体育館は蒸し風呂と化していた。 なぜ体育館というものはこんなにも風の通りが悪いのか。なぜ暑い(熱いとも呼べる)とわかっているのにクーラーも扇風機も設置が義務づけられていないのか。 きっと大人は忘れているに違いない。だからこの不快さは後世まで受け継がれてきたに違いない。 そして忘れているからこそ、教師は見るからに暑苦しいスーツで壇上にあがっているのだ。 「……23」 ボソッと後ろから声がした。なにかと思い後ろを向くと、グーとチョキを作った西折くんがいて、ぼくに気付くとニヤリと笑った。 「23?」 小声で訊く。西折くんは曲げた両手を見せた。 「校長が何回『えーっと』って言うか数えてるんだ」 無邪気に笑う。そしてまた一本指が折られた。
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