魔族の誇りと過ちと

2/13
前へ
/13ページ
次へ
 ◇◆◇◆◇  我々魔族は、人間には住みにくい北端の地にて生活している。ガルデナという正式な地名がありながら、 ワールドエンドと呼ばれる程に偏狭の地だ。  そこでは暮らせない魔族は、大地を割ったかのような巨大な谷に築いた、バルタ・バレーという地で生活する。  私には解らない。前任の魔王は何故、このような状況を受け入れていたのか。  我々が人間に劣るのは繁殖力のみで、個々体の能力は全て我々魔族が優れているというのに。  だが、時に例外というものが存在する。  バルタ・バレーから攻める事ができる人間の領土は2つ在る。そのうちの片方を攻めた時に、そいつと出会った。  レクトール・オリオン。若き騎士だった。  そいつは我々魔族の猛者達を何体も倒し、 前線で指揮を執っていた私の前にたどり着き、そして、3日3晩に渡る一騎討ちを繰り広げた。  そして、私は負けた。  間一髪のところで側近の日影に救われ命は助かったが、勝敗は火を見るより明らか。私は、負けたのだ。  しかしだからといって諦める訳にはいかない。私は、魔族の誇りを背負っているのだから。  2度目の進行はレオンの居ない国に攻め入った。  数では圧倒的に劣っていた我々にできる策は限られている。その少ない策を捻り出し、レオンが援軍に来れないようにもした。  しかし、全ては水泡に帰した。  プライドも何も捨て去って敷いた全て打ち破ってレオンは、再び私の元にたどり着く。  魔族最強である私以外に、レオンと渡り合える者は居ない。  その戦いもまた、2日間続いた。  しかし、決着が着く前に戦争は終わった。我々魔族の負けで、だ。  数で劣り指揮官の私も出払っていた我々は、レオンの敷いた策とその配下達によって翻弄され、散り散りになった。レオンはその命を張って、私を足止めしていたのだ。  2度目の敗戦。  兵を失い過ぎた我々には、もう後は無い。  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加