魔族の誇りと過ちと

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   これで、我々魔族に残された猶予は半年となった。急がなければ本当に、魔族な未来は閉ざされる。  しかし日景は私に逆らう事なくそれを実行した。私を信じてくれているのか、魔王たる私には逆らえないからなのか。魔王当人である私には解らない。  食事が終わってから私は城の研究所に籠った。人間達討伐のための兵器開発のためだ。  私の魔力を注ぎ込み制作する破壊兵器。私が得意とする黒魔導は物質破壊に長けている。その分生命干渉力は弱いが、人間共からあの裕福な土地を奪えればそれでいいのだ。だから、物質破壊によって人間共の削ぎ落とし、撤退させて奪い取る。  そもそも命まで奪う必要は無いのだ。つまり、これでいい。  前回我々が苦汁を舐めさせられたシューダスト広域戦役からいくらかの時が経ち、それからずっと、この兵器開発に力を入れている。  兵器の名称は≪rain≫。  物質を破壊する黒い魔導の光がまさしく雨のように降り注ぐ事から付けた名称だが、我々魔族に恵みをもたらす、という願いもここに込めている。  雨は恵だ。  雪しか降らぬこの地では、水分さえまともに確保出来ない。  私とて、戦争や殺戮がしたいわけでは無いのだ。おそらく故にこそ前代魔王は人間共の地に侵略しようとはしなかった。  ならば和平を、というのも、無理な話なのだが。  我々は本来、魔族というひとつの種族ではない。  遥か昔、他種族と混合出来る種族(つまり他種族とのハーフ)が居て、それらが繁栄し、新しい種族を増やしていった。  その種族を人間は、魔物と称して蔑んだ。  そしてその種族も、人間共の個体の生命力の無さや異常なまでの繁殖力を忌み嫌い、敵対した。  そして争い、現状となった。  その現状が、数百年続いたのが今である。  我々は、その混合可の種族の末裔なのだ。  敵対し合うからこそ、理解しあえない。これはもはや、仕方ないことなのだ。
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