魔族の誇りと過ちと

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 そのまま数日、私は研究所に籠った。  風呂にも入らず、食事も採らずにだ。 「魔王」  ふと、研究所の入口に、いつの間にか日景が立っていて、思わず浮き足立ってしまった。 「日景よ。貴様は存在感を絶つ術式を常に纏っているのだから、いきなら現れる際は気を使えと言っておいただろう」  日景は闇を司る暗黒の象徴、魔女の末裔だ。絶滅寸前などという言葉では表せられないほど危機的な状況を真っ先に受けたのは巨人族ではあるが、それよりも元々の数が少なかった魔女は、もうこの日景のみとなっている。 「申し訳ありません」  日景は深々と頭を下げ、 「断食されてからもう1週間が経過します。そろそろ」 「解っている」  私は作業に戻り、答えた。 「案ずるな。倒れる前には補給をする。――人間共に再戦を仕掛ける前まで、贅沢は温存しなければならないからな」  そうだ。この兵器を作るにはまだ時間が要る。少しでも、気休め程度の僅かな時であろうと、稼がなければならない。  不殺兵器は繊細なのだ。調整は微塵の誤差も許されない。 「しかし魔王。魔王がお食事を採らなければ」 「解っていると言っただろう」  くどい日景には目もくれず、私は言った。 「倒れたりはせんと言ったろう。案ずるな」 「…………」  ふと黙った日景を、横目で確認する。そしてようやく、日景の顔色が悪い事に気付く。 「貴様こそ、私を真似て断食しているのではなかろうな」  問うと日景は、首を横に振る。 「魔王の真似など、畏れ多くて出来ません」  その言葉に、胸につかえていた異物が取れた。 「そうか」  私は頷き、今度こそ作業に戻る。 「魔王。わたくしになにかお手伝い出来ることはございますか」 「いいや」  作業を進めながら、今度は私が首を横に振る。 「――貴様が手をつけたら、大変な事になってしまうではないか」  結局私の断食は2週間で限界を迎えたが、補給した後、再び断食に入る。  ◇◆◇◆◇
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