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食糧の供給量から考慮せ、我々に残された猶予は半年だと判断した。
だが数ヵ月が経ち、兵器が未だ完成せず焦っていた私に驚愕の事実が明かされた。
「――今の調子なら、あと半年は保てると思われます」
日景の報告だ。
「有り得ん。それでは残っていた食糧が殆んど減っていないということになるでは無いか」
「その通りでございます」
日景は当たり前のように頷いて、
「どういう意味だ?」
その私の問いへの返答を、珍しく躊躇った。
そしていくらかの沈黙の後、
「民の殆んどが、断食しておりますので」
そう答えた。
「……なんだと……?」
「仰った通りでございます。魔王が断食しているのに、我ら兵や民が満足に食事を採れる道理などございません」
その言葉に、嫌な頭痛を覚える。
「そんなこと、誰が命じた」
「誰も」
「ならば何故、そんな勝手な事をしているのだ」
「他ならぬ、自分達のためでございます」
当然のように、日景は答える。
「魔王が兵器を完成させることが出きれば、我々魔族の未来は繋がります。それまでの時を稼ぐ事が出来れば、今の苦など苦ではありません」
そう。それはおそらく、事実だ。
しかし問題は、この兵器が完成するのが先か、魔族が滅びるのが先か解らない事だった。
いつ完成するか解らない。
手段を選んでなどいられないというのに、私はシューダスト広域戦役の時の事を思い出す。
シューダストは、バルト・バレーほどでは無いか剣山に囲まれた険しい場所にある。しかし清らかな水が流れるため、水源には困らない。
その剣山を利用し、レクトール・オリオン率いる部隊の援軍を錯乱及び足止めをと試みた我々だが、やつは自らと自らの部隊を切り離し部下を囮にして、単身で、私の前に現れたのだ。
なめているのかと私が問うと、やつはなめてなどいないと答える。
――俺にも、お前が必死になっているのと同じように、守りたいものがあるというだけさ。この気持ちも解るだろう? 前線に立つ愚かな魔王よ。
その言葉に、気付いたのだ。
ああ、こいつらにも、誇りがあるのだな、と。
ならばその誇りを無下には出来ない。故に、強力な兵器を作ろうとも極力殺さぬようにしているのだ。
それが、私の誇りだ。
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