アオイハル

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「誰に?」 そこそこマニアックでグロテスクな歴史モノの漫画。 そんなの喜んで借りる奴の顔が見てみたい。 自分の事は棚に上げて問い質すと、村上はヘラリと笑って口を開いた。 「あー……誰だっけ。あ、ほら、空気みたいな印象薄めの。えーっと、あっ!クラブの時間にいつもオマエの席に座ってる子」 「誰それ」 「名前何だったっけなぁ」 埒のあかない会話を繰り返している内に教室内に予鈴が鳴り響いて、煙に巻くかのように村上は早足で逃げて行った。 「あ、ちょっ……」 うちのクラスは“歴史研究クラブ”の教室に使われていて。 何ともマニアックなクラブの連中と顔を合わせるのも気まずくて、俺も村上に倣うかのように教室を出た。 ゾロゾロと教室に流れ込んで来る“歴史研究クラブ”の生徒には目もくれる事なく、屋上を目指して踵を返した。
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