アオイハル

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まだクラブの時間中の校舎は驚く程に静けさを湛えて、一歩道を間違えたら別の世界にでも行ってしまいそうなくらい。 後ろからついてくるような自分の足音を耳に、図書室を飛び出した足は真っ直ぐに教室へと向かっていた。 後ろのドアの隙間からそっと中の様子を窺う。 この位置からじゃ窓際の俺の席なんて見えなくて、ゆっくりゆっくりと前方の窓に近付き腰を屈めた。 あー……俺、何やってるの? 教室の中からは一体何の研究なんだか、忍者がどーのこーのだとか、謎めいた会話が繰り広げられている。 いっそのこと俺が今、忍者にでもなりたいよ。 俺の席が見える窓辺に近付いてそっと頭を上げた。 一瞬、自分の席に座る艶っぽい長めの黒髪が見えて、確かめるまでもなく女子だと認識した。
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