アオイハル

17/24
前へ
/101ページ
次へ
……可哀想だ。 かわいそう過ぎる。 きっと彼女は村上狙いで、漫画をダシに何とか近付きたいと一生懸命なんだろう。 そう考えれば考えるほどに、彼女への同情だとか、名前すらまともに覚えていない村上への苛立ちだとか 変な感情がごちゃ混ぜになってより一層俺をへこませる。 「あー……何かダメだ」 子供の頃から自分でも理由の付けようのない感情に蓋をするのは得意なハズだったのに どうしてかこの日だけはいつまでも胸の奥にモヤモヤが燻り続けて。 それを意識の奥へ掻き出すかのように、机の上に無造作に置かれたままの漫画を捲った。 「……ふ、」 開いた漫画本には、何度も何度も読み返したような跡があって。 きっと村上と話を合わせようと頑張って読んだんだろうな、なんて思うと、知らず知らず苦笑いが零れた。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2500人が本棚に入れています
本棚に追加