アオイハル

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『武田さま最高!』 漫画のコマの空欄に走り書きされた、見覚えのない文字。 思わず自分の事かと勘違いしてドキンとしたのも束の間、ドアップで描かれた武将の姿を目にしてすぐに漫画のキャラの事だと気付いた。 「あの子……何してんの」 きっと宿題の途中だったんだろう。 ペンを片手に漫画を読み始めて、つい興奮して村上の漫画である事も忘れて、思わず落書きしてしまったんだろう。 彼女のそんな姿を想像して、益々笑みが止まらなくなる。 「ふっ、ははっ」 どうしてなんだろう。 “上杉ヒカル”だけは、他の女子とは違う気がして。 まだ話した事もない。 多分、彼女は俺の存在を知らない。 下手したら俺、ストーカー寸前かも知れない。 それなのに。 14年間生きてきて初めて生まれたこの言い様のない感情を、嘘や我慢する事で汚したくはないと思った。 “上杉ヒカルをもっと、知りたい” 人はそんな感情を何て呼ぶのか。 そんな事 どうでも良かったんだ。 .
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