キラキラヒカル

7/14
前へ
/101ページ
次へ
たった数メートルの距離が恐ろしく長く感じて、わざとバタバタと靴音を立てながら廊下を駆けた。 ……またやってしまった。 小さな頃から、人の顔や名前を覚えるのは得意じゃない。 毎日顔を合わせるクラスメイトですら『この人誰だっけ』なんて思う日もしばしば。 唯一、貴重な漫画を貸してくれる恩師の名を忘れるなんて……! 「村上君、村上君、村上君……」 忘れないように、村上という名を口にしながら暗記を試みる。 「村上、村上……痛っ……」 不意に顔面から誰かとぶつかって、思わず身体がよろけた。 覚束ない視界の中、ほのかに感じた甘い香りに嗅覚を刺激される。 「……大丈夫?」 .
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2500人が本棚に入れています
本棚に追加