キラキラヒカル

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細胞に沁み込んでいくような香りに身を預けたままフラフラと自分の教室に足を踏み入れた途端、廊下側の窓辺にいた女子が一斉にあたしの元へと走ってくるのが見えた。 「ヒカルちゃ~ん、見たよ!いいなぁ、今の武田君じゃーん」 「……武田?」 首を傾げるあたしを余所に、集まって来た女の子達は黄色い声を飛ばし始める。 「あたしも武田君にぶつかってみた~いっ!」 「武田君てすれ違うだけでイイ匂いだよね」 「この間3組のマリちゃんフラれたって~」 きゃいきゃいと騒ぎ始めたクラスメイトの熱に逆上せそうで、あたしは思わず口を開いた。 「あ、あの……」 「ヒカルちゃん!本当ラッキーだったね」 「いやいや……ところで……武田君て、誰?」 あたしの一言に、騒がしかったその場が一瞬の静けさに包まれた。
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