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「あれ……?何処に置いたっけ?」
誰も居なくなった部室にバッシュの姿はなくて、当てもなく来た道を辿る。
薄明かりの漏れる体育館の横を通り過ぎようとして、体育館のステージ脇にシューズバッグを置き忘れた事を思い出した。
重い鉄製の扉をガラリと引き開けた瞬間。
ちょうど目の前に聳え立つバスケのゴールポストに、ボールが跳ねたのが見えた。
ガコンっと嫌な音を立てて弾かれたボールは、古い木目の床をバウンドしてコロコロと転がっていく。
まだ誰か練習してんの?
さして興味はなかったけれど。
体育館の壁に取り付けられた大きな掛け時計をチラリと窺いながら、壁際を這うようにステージ脇のシューズバッグを取りに向かう。
「あ、あった……」
……急いで帰らないと。
バッシューを手にして、帰路を急ごうとドアの方向に振り返ったと同時
また先程のゴールポストに向かって放たれたバスケットボールが俺の瞳を掠めた。
ゴールに吸い込まれるかのように綺麗に弧を描くボールは、音もなく風を切ってゴールネットを揺らす。
静寂の中、ボールが床を跳ねた音だけが嘘みたいに大きく響いた。
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