3600秒のセカイ

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珍しく涼しい午後。 部活が終わる頃には一雨降るかも知れない。 鼻先に感じた雨の匂い。 見渡す青空はまだ薄い雲が形どる。 あー……メロンパンみたい。 眼前を漂う雲がふわふわの丸い形を作り上げて。 メロンパンから連想される人物を思い浮かべて苦笑い。 結局辿り着くところはそこなのか、と自分のヘタレ具合を嘆く。 誰かを信じるのは怖い。 信じて裏切られて、傷付けて傷付く。 それならばいっそのこと、誰にも触れなければいい。 ずっと物分かりのいい子供を演じてきたから、どうしたら人から好かれるのかなんて十分に分かっている。 教室の中で自分が作り出す笑顔が、あくまでも“作り物”だって事も分かっている。 だけど。 どうしたら彼女の視界に入る事が出来るのか。 どうしたら彼女の中に俺の存在を記憶してもらえるのか。 どうして、こんな気持ちになるのか。 自分自身の事が一番分からないでいる。
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