3600秒のセカイ

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「…………上杉さん、の事?」 一瞬、頭の中が真っ白になる。 「ああ、そうそうそうそう、上杉さん」 村上の口から出た“上杉さん”という単語に少なからず動揺を隠せない。 「どうって……何が?」 声が震えてないか、たった一言が嘘みたいに緊張した。 「や、彼女さ。俺の事好きなのかなーっとか思って」 「……は?」 鈍感な村上でさえ気付くような何かがあったのか。 それを訊くのがまさかこんな屋上だなんて思いもしなかった。 「ほら、上原さんてさ。男友達とか居なさそうじゃん。でも毎日漫画借りるフリして、本当は俺に会いに来てんのかなーって……」 「……」 だから。“上杉”さんだって。 堪らなくイライラが募って考えるより先に口を開いた。 ムッとした表情が顔に出ないよう、笑顔を作って。 「……そう、なんじゃない?」
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