3600秒のセカイ

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「さっきお昼食べたばっかじゃん」 村上は屋上のコンクリートの床に仰向けになって。 俺の方を見ないままクスクスと笑い出す。 「村上、メロンパンとか持ってないの?」 「持ってる訳ない……ってか、武田っち甘いの嫌いじゃん」 ……今この瞬間はメロンパンの気分だったんだけど。 「あー、そうだった。忘れてた」 吸い込まれそうな空の下。 この学校の中では一番空に近い場所。 決して手が届かないそれに、ただ両手を高く伸ばして。 3600秒の時間の流れ。 何処にも辿り着けない俺達の、僅かな自由のタイムリミット。 正確には50分授業だから……3000秒か、なんて真面目に考えて。 この長くて短い時の中で俺の中に落ちてきた結論。 俺は多分 上杉ヒカルの事が好き。 .
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