3600秒のセカイ

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「ねぇ上野さん、漫画。いる?」 村上が、俺の席に立つ彼女の顔を後ろから覗き込んで訊ねる。 ちょ、村上っ? 俺の位置からは彼女の後ろ姿しか見えなくて、今どんな表情をしてるのか分からない。 「わ、わ、あの……上杉です」 驚いたように声をあげた上杉ヒカルが村上の方に視線を移すのが見えた。 耳の奥でドクドクと響く鼓動が邪魔をして、二人が何を話しているのかなんてそれ以上聞こえなくて。 今、彼女の視界に映るのはきっと村上の姿、だけ。 ぶわっと溢れてくる苛々の正体に名前を付けたくなくて、慌てて二人から瞳を逸らした。 俺の視界の端で、楽しそうに笑い合う二人。 あー……もう。 情けないくらいに気になって仕方がない。 彼女の瞳に俺の姿は、ほんの1ミリも映らないのに……
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