3600秒のセカイ

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村上と話を終えた彼女が俺の席を離れ、一歩ずつ俺が立つ入り口に向かって歩いて来る。 手には、さっきまで俺が村上から借りて読んでたあの漫画。 彼女は俯いたまま決して目が合う事はないけれど、何処かで俺の心の中、全部見透かされてるような不思議な感覚。 彼女の後方で、ヘラヘラと笑ってヒラヒラと手を振る村上の姿が見えて、堪らなく嫌な感触。 何もかもがごちゃ混ぜになって、胸を高鳴らせる。 何でだろう。 上杉ヒカルを見るだけで 今まで知らなかった“自分”が次から次へと出てくる気がするのは。 不意に感じた柔らかい香り。 瞳をあげたと同時に、上杉ヒカルはピタリと俺の正面に立ち止まった。
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