3600秒のミライ

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「あー、武田君、今日もかっこいいねっ」 一括りに女バスと言ってもいろいろ、ある。 毎日毎日、真面目に練習してる部員と。 毎日毎日、反対側の男バスのコートを見つめて黄色い声をあげる部員。 不意に後者にあたる彼女達が呟いた声に、思わず立ち止まった。 “武田君” 最近、よく耳にする名前。 毎日毎日、緑色のネットに貼り付いている女バス部員が合唱のように口にする名前。 そして、同じクラスの女子達が一丸となって騒いでいる、噂の彼の名前。 先輩も後輩も一緒になって「きゃー、武田君ナイッシュー!」なんて声援を送ってる。 今、ゴールを決めた人、なのかな? チラリと男バスの方を見てみたけれど、シュートを決めた彼はとっくに他の部員に混ざってしまっていて。 どの人もこの人も背の高い巨人みたいで、区別なんてつかない。 そもそも男バスにもイケメンにも興味のないあたしには、無駄骨でしかないんだ。
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