3600秒のミライ

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「武田君て何で彼女作らないのかな~?」 「出来たら困るっ」 「もしかして好きな子とかいるのかな?」 「いや~~っ!」 ……好きな子? 時代劇のお侍さんがかっこいいとか、漫画に出てくる武将さまが素敵とか。 そういうのも“好き”に入るのかな? 同世代の女の子達はみんな“恋愛”に夢中で。 それって絶対に必要な事? お伽噺に出てくるお姫様のように、決して誰もが幸せになれる訳じゃないと思うんだけどな…… “武田君話”が止まない部員達を横目に、女バスのコートへと戻る。 ほんの少しモヤモヤとした気分のまま、ボールを抱く腕にギュッと力を込めて。 「……好きな子って言えばさあ……武田君て、たまに女バスの方、チラ見してない?」 「あー、分かる、分かる」 「マジで?どうしよう、あたしの事見てるのかな」 「ないないっ……」 あたしの耳に、もう彼女達の会話が届く事はなくて。 「……誰の事、見てんだろうね」 知らない所で、小さな社会の大きな渦に翻弄されていくのかもしれない。
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