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「武田君て何で彼女作らないのかな~?」
「出来たら困るっ」
「もしかして好きな子とかいるのかな?」
「いや~~っ!」
……好きな子?
時代劇のお侍さんがかっこいいとか、漫画に出てくる武将さまが素敵とか。
そういうのも“好き”に入るのかな?
同世代の女の子達はみんな“恋愛”に夢中で。
それって絶対に必要な事?
お伽噺に出てくるお姫様のように、決して誰もが幸せになれる訳じゃないと思うんだけどな……
“武田君話”が止まない部員達を横目に、女バスのコートへと戻る。
ほんの少しモヤモヤとした気分のまま、ボールを抱く腕にギュッと力を込めて。
「……好きな子って言えばさあ……武田君て、たまに女バスの方、チラ見してない?」
「あー、分かる、分かる」
「マジで?どうしよう、あたしの事見てるのかな」
「ないないっ……」
あたしの耳に、もう彼女達の会話が届く事はなくて。
「……誰の事、見てんだろうね」
知らない所で、小さな社会の大きな渦に翻弄されていくのかもしれない。
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